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スズキバレーノ XT に乗ってきた

 スズキバレーノ XT 試乗レポート

 → 思ったこと

 正統派のダウンサイジングターボ。まじめな作りにスズキらしさを実感。ターボであることを意識させない重厚な走り。3気筒のネガティブさはなし。

 想像以上に上級感のある乗り心地と静粛性にびっくり。ミディアムクラスからのダウンサイザーも納得できる。インド製であることに問題点はなし。

 インテリアに華がない。全車速対応のレーダークルーズコントロールが欲しい。



○排気量とかシリンダーの数を競う時代ではないことを実感

私はあまり欧州車に乗る機会がないから純粋な比較はできないが、評価が高いプジョーの1.2Lターボと比較しても、素人判断でこの1.0Lターボはかなりいい線まで行っていると思う。スズキの堅実さだけは魅力だ。今回ダウンサイジングターボをやるにあたって、ライバルをしっかり研究し、忠実に再現したように思われる。ダウンサイジングターボの正統派そのものに仕上がった。具体的には低いところから太いトルクが出る。回さずに済むことによる静かさ。高速での燃費の良さ。ここぞという時のパワフル感などなどである。

「ブースタージェット」と名づけられた新開発の3気筒ターボは、スズキがデュアルジェットで培ってきた高効率エンジン技術にターボチャージャーを組み合わせたもの。82kW[111PS]/160Nm[16.3kg-m]という1.6L並みの動力性能を持つ。ただ、トルクに限れば1.8L並み。これを1,500という低い回転から発揮する。燃費は20.0km/Lでエコカー減税には適合しないが、このサイズの1.5〜1.8L車は燃費基準とのマッチが悪く、他社を見ても減税車は少なめである。ただ、1.5Lでも20.0km/Lくらいの燃費が出ることは珍しくない時代。この数値がすごくいいわけではない。

バレーノに乗っていると、この車が1.0Lであることは忘れる。日常域のほとんどは2,000回転以上必要としない。6速ATもエスクードと比べて圧倒的にスムーズ。低回転を保ったままCVTのように(良い意味で)走ってくれる。ただ、ターボだぞ!!という主張はない。ある回転でパワーやトルクがドラマティックに盛り上がるようなことはない。しかし、レスポンスはいい。追い越ししようとアクセルを踏み込むと、すぐさま力強い加速をしてくれて、あっという間に法定速度を超えてしまう実力がある。副変速機構付CVTだと、もたつきが出てしまう。6ATとしたのもターボの良さを生かす理由があるかもしれない。

実用域の扱いやすさは特筆すべきである。出足から1.8Lクラスのトルクが出るおかげで、低回転しか使わずに済むから3気筒であることは忘れてしまう。4,000回転以上回せば、3気筒っぽい音がするが、それもほとんど気にならない。静かで振動が抑えられている。燃費は自動車が示す限り、街乗りで15.6km/Lと平凡。山坂道でターボらしい走りを存分に楽しんだら13.3km/Lまで落ち込む。しかし、高速道路を流していると20.0km/Lを超えてくる。ダウンサイジングターボの流儀に沿ったもの。つまり、単に燃費だけ追求するなら、マイルドハイブリッドの方がいいかもしれない。しかし、どうしてバレーノはターボを選んだのか。


○紳士的なエンジンにマッチする上質な乗り味と静粛性に思わずニンマリ

なぜ、ターボなのか。小排気量に選択と集中する中で、スズキの世界戦略上、ダウンサイジングターボは避けられないものであったこともあるだろう。しかし、バレーノには静かで力のあるエンジンが最適と考えられた。そうすると、ターボがベストな選択となる。それはバレーノの静粛性の高さにカギがある。オーディオもすべて消して走っていて、バレーノの静かさには驚いた。ロードノイズもこのクラスのコンパクトカーとしてはトップレベルの小ささだし、何より窓ガラスから入ってくる騒音がものすごく小さいことに驚く。インドでは高級車として販売されているそうだが、伊達に専用の販売店まで作って売るわけではない。もちろん、レクサスやアキュラなどと比べれば、おもちゃみたいなものかもしれない。しかし、スズキにとってのプレミアムを誠実に表現していることに好感を持った。

それに乗り心地がこのクラスの小型車では出色の出来だ。私はものすごく好きなタイプ。これまでスズキのコンパクトカーはどれも非常に似たものがあった。極論を言えば、ソリオもイグニスもそれほど違った印象を持たない。しかし、バレーノは一味違うことを感じられる。イグニスやスイフトのようなしっかりとした味は残しつつ、まろやかでやさしい。高級感があるとは言わないけれど、こんな雰囲気を持った日本車は他にあまり思いつかない。独特の雰囲気がある。この静かさと乗り心地の良さを持っていれば、ミディアムクラスから乗り替えても、不満を持つことはないと思う。


○普通の日本車として乗れる車。装備も充実。欲を言えばいまどきの装備が欲しい。

この車はインド生産が話題。しかし、今はどこで作ってもクオリティに違いはないと言えそう。バレーノの出来栄えにはまったく問題がない。お借りした車は、最上級仕様「XT セットオプション装着車」。当たり前に装備されていて欲しいものだけでなく、本革シート、独特の表示機能を持つカラーマルチインフォメーションディスプレイなどがセットとなっている。さらに、ディスチャージヘッドライト、キーレスプッシュスタート、16インチのアルミホイール、ミリ波レーダー式のプリクラッシュセーフティシステムとレーダークルーズコントロールも付いている。これで価格は178万円。今、1.8Lクラスで、このくらいの内容を求めれば240万円にはなる。フィット、ノート、デミオクラスだって200万円を超える。しかし、バレーノならナビをつけて200ちょっとで買える。これはなかなか魅力的だ。

ただ、スズキの弱点は内装に華がまったくないこと。カラーもブラック基調でソリオやイグニスと1クラス違うということを表現できていない。また、安全装備類も周回遅れで、レーダークルーズコントロールも40km/h以下でOFFになってしまう。レーダーブレーキサポートIIもデュアルカメラ式があることを考えると、フラッグシップカーとしては不満が残る。もう少しお金を払うから最新のものをつけて欲しいと思う人は多いだろう。そういう意味では、まだ乗っていない1.2Lモデルが魅力的かもしれない。オートエアコンがないのは残念だが、140万円そこそこというのははっきり言って安い。リセールバリューは微妙だろうから長く乗る人に限るが、かなりおすすめできる車なのかもしれない。
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