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TOYOTAのKINTOに妄想する未来

1. KINTO

 

トヨタがスタートさせた愛車サブスクリプションサービス「KINTO」。サブスクリプションとは定額サービスといった意味で使われるそうだ。形態としてはリースに似ているが、新しい考え方の乗り方と位置付けられている。このサービスが発表されて、巷では「高い」「魅力がない」という声が大半だ。3年間で6台のレクサスに乗れるという「KINTO SELECT」は置いて、「KINTO」は税込5万円前後から設定されている。プリウスとカローラスポーツが対象である。確かにこの価格設定なら普通に購入するという選択肢も"共存"する。ただ、私はこの仕組み、将来の自動車の乗り方、サービス体制、商品の在り方にものすごい変化をもたらすのではないかと思っている。

 

この乗り方のターゲットは「若い世代」のみだと思う。我々のような今までの価値観に縛られたおじさんは対象とされていない。高いという人はどうぞ普通に購入してくださいということ。このサービスから入った若者がずっとこれを続けくれればいいということなのだ。まず、5万円は確かに高めである。でも、あえて真ん中あたりから投入してきたということだろう。突然加速度的に普及した場合、想定外のことが起こることもあるし、リスクがある面もあるので、最初から「安いこと」を売りにせず、試験的なスタートとみるべきだ。ゆくゆくは当然お手軽なものも登場してくるに違いない。例えば、この料金設定ならパッソやヴィッツ、ルーミーあたりなら3万円台くらいになりそう。これはかなり他メーカーは脅威なことだと思う。

 

2. オリジナル任意保険の魅力

 

私は「KINTO」のポイントは、このために作られたオリジナルの任意保険にあると思う。これまでのリースも任意保険を含めることは可能であった。しかし、通常の保険料をプラスするだけだから高い。車両や税金などの維持費、メンテナンス費用に任意保険を加えると、新卒の人ならプリウスでたぶん6〜7万円になる。つまり、このプランだと若者は2万円くらい得をする。しかも、等級といった概念が存在しないようで、使ったとしても翌年の保険料増額を心配する必要もない。

 

地方在住の若者の場合、車を持っていない人に会うのは難しい。主流はもちろん軽自動車。ということは、地方のユーザーが初めて乗る車はスズキとダイハツ、またはホンダということになる。そこにトヨタがどう食い込むかは重要だ。なぜなら、車にさしたる興味のない人は、初めて買ったメーカーのお店で次の車も乗り換えるケースが多い。地方で減っているトヨタ車ユーザーを奪還する必要があるのだ。

 

代表的な地方の新卒者の車の維持費はいくらくらいだろうか。私の知る限り平均して4万円とみている。なんせ車は保険が高い。21歳以下、26歳以下であれば1〜2万円の負担は覚悟しなければならない。そうなると、必然的に乗れるのは軽自動車と思ってしまう。任意保険料が15,000円前後。あとは残価設定で購入した車のクレジットが25,000〜30,000円。もし、私が月々4万円も支出しなければならないとしたらどうだろうか。タントカスタムとプリウスが5,000円の差なら、プリウスにしたいと思う。

 

3. 意外に高くないかもしれない料金設定

 

月々の金額を分析してみると、プリウス「S」グレードの5万円という設定は全然高くない。税抜で45,000円というところなのだが、ここから保険料と3年間の自動車税・メンテナンスパック料金などを考えると、実質的な車の払いは多くて35,000円くらいか。ちなみにディーラーでプリウスの同じグレードに何もつけずに見積もりすると、3年残価設定プラン頭金なしでは、48,100円となっている。

 

4. ディーラー再編との関連は・・・

 

「KINTO」はなかなか営業的に考えられている。まず、車を売ること。クレジットを取ること。カード払いなのでカードも取れてしまう。メンテナンスも入庫する。そして保険も加入してもらえる。1台で全部取り込める。しかも、営業マンもメーカーも無くなればいいと思っている値引交渉も消滅する。そうなれば、極端な話がディーラーの店舗すら必要なくなるかもしれない。スマートフォンで申し込みするのをメインに、ショッピングモールのカウンターやドコモショップのような形態でも十分やれるかもしれない。今や自動車ディーラーも人員不足。営業職をやりたい人も少ない。営業というより販売員でよければ、長年の経験や人脈などもいらない。販売会社の業務の効率化。将来的な縮小にも対応できる可能性がある。

 

トヨタは来年度の4月から東京では販売チャネルを統合する。将来的には全国的にどこも同じになるだろう。そうすれば、当然ながら力のない販売会社は淘汰されていく。人も足りなければ、お客も減るのなら、今ではトヨタ・トヨペット・ネッツ・カローラと1つの市に4つある拠点は1つでいいのかもしれない。「KINTO」はどうなるかわからない将来のディーラー体制にも柔軟に対応できる可能性を秘めている。

 

5. 3年後買い取り不可から考える未来

 

「KINTO」は、残価設定とは異なり、もしもその車が気に入ったとしても買い取ることは不可である。これが一番重要なところではないかと思う。これを許したら、まったく「KINTO」の存在意義がないと言ってもいいほどだろう。なぜなら、トヨタは車を3年で乗り換えてもらうサイクルを作りたい。今7年とか10年になっている代替サイクルを3年にしてしまえれば、単純に倍の生産台数になるわけで、つまり少子化になったとしても生産台数は維持できる。生産台数を維持しなければ、トヨタだけでなくグループや下請け、孫請けなど日本の屋台骨を支えている多くの人の生活が立ち行かなくなる。そのためには、常に新しい物に乗ってもらう必要がある。そして、戻って来た車は当面は中古車として販売することでやっていくはずだが、未来では単純に解体するということも考えているのではないだろうか。乗ってもらった車の行く末をトヨタがコントロールできなければ、この仕組みを作った意味がない。

 

6. 3年持てばいい車が出てくる

 

「KINTO」が定着してきた場合、私が経営者なら間違いなく3年だけ持てばよい車にすると思う。そうすれば、もっと車はコストが下がるし、サービス料金も引き下げられる。したがって、将来的には「KINTO」専用車種というのが登場してくると思う。使い捨ての車だ。3年持てばよいのなら、別にメンテナンスも不要になるかもしれないし、電動化すればオイル交換などもいらない。

 

初回車検を受ける前に解体してしまうのだから、車齢が若いものばかりになるわけで、メンテナンスも格段にカットできる。そもそもいらなくなるかもしれない。人が作る製品である以上、トラブルはあるのだろうから、何かあった時には代車を持って取りに行けばいい。今の環境で納車引き取りは非常に重荷だが、こうした時代になれば対応もできるだろう。私はトヨタの「KINTO」に、30年後の自動車との付き合い方、ディーラーの在り方、壮大な思惑があるように思う。こんな世の中、単なる私の妄想に過ぎないが、トヨタが力を入れるとすれば、当然販売台数の維持であり、最終的にはこんな社会を目指しているのではないかと思うのである。

 

もちろん、豊田社長の話の通り馬車がなくなっても、競走馬や乗馬の馬が残ったように、スポーツカーのような走る楽しみを得るための車は必ず残るのだが、反面移動の手段としての車は、もっと簡素で使い捨てのような形になってゆく気がしてならない。他メーカーもトヨタの動きは無視できないだろうと思う。

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