昨年末の自動車保有台数に関するデータを見た。8,100万台というのは過去最高だというから素直に驚く。なぜなら、世間では少子化、高齢化。暗い話題で自動車業界の低迷を煽ろうとしているし、それを鵜呑みにしている。もちろん、将来的な予測をするなら、明るい要素は少ないかもしれないが、今の段階ですぐにそこに結びつけることはできないかもしれないと考え直す材料になった。
例えば、興味深いのがいわゆる小型車(5ナンバー)が37,000台減少しているのに、軽自動車が94,000台増加しているところ。ならば、3ナンバーの普通車が大きく減ったんだろうと思うと、こちらは13,000台増加している。もちろん、保有台数だから新車で売れた数というわけではないと思うが、小型車が減っている以上に軽自動車が増えているとすれば、注目したいところである。
つまり、登録車をやめた人の中で、けっこうな割合の人が軽自動車の複数所有に変えたと考えることができる。あるいは、今まで車を持っていなかった人が軽自動車を購入したとも考えられる。ならば、自動車メーカーとしては台あたりの利益は減少しても車の数が増えるのだとすれば、決して軽自動車を無視できないことになる。そういった面で軽に力を入れるメーカーが増えているのも頷ける。また、販売店にとっても台数を増やしてもらえるメリットは大きい。例えば、ホンダは明らかに普通車が減っているが、アコード1台だったのが、N-WGNとN-BOXの2台になるなら、フィット1台になってしまうよりずっといいのは明らかです。
台数が増えれば、それに加えて車検整備や保険などディーラーの収益にも貢献する。用品などの売り上げも上がる。軽自動車となると、つい財布の紐は緩む。普通車の値段に慣れている人からすれば、オプション満載でも安く感じてしまうからだ。それに3年経過してもびっくりするくらい下取り良く、普通車にしか乗ったことがない人にとっては、買い替えしやすい。残価設定でおつりまで来ちゃうとすれば、3年ごとに買い替えてくれる人もけっこういるだろう。金額的には登録車とさしたる違いはないケースもあるのだが、なぜか軽自動車は日本人にとって精神的な負担が軽いものなのだ。
もちろん、だからといって自動車業界はずっと安泰というわけではない。だが、軽自動車の過度な優遇に批判的な人がいるものの、優遇があるおかげで本来減少するところ、むしろ増加に一時的であっても、そう転じているとすれば、軽は若者の車離れの歯止めになっているとも言える。その上、優遇されている分、ちゃんと経済効果として現れていることになる。そういう意味でも、安易な軽自動車の増税は生産する側、業界の雇用、ユーザー、そして結局は国にとっても、誰一人にもメリットないと思う。